「土壌微生物研究所」メンバー紹介
中野諭一
- ●略歴
「インターネットを使って環境・社会問題を解決したい!」およそ10年前にそう思い立ち、シリコンバレーで起業を試みるも、ビザの問題で敢え無く失敗(それ以来米国に入国できていない)。以降、試行錯誤、紆余曲折(エンジニアとしてスタートアップ企業でのサービス開発など)を経て農業にたどり着く。現在は本プロジェクトの基盤となる農業系サービスを開発中。
●農業とのかかわり
「幼少期から昆虫や自然が好きだったことから気候変動などの環境問題に強い関心を持っていました。環境問題という広大なテーマのなかで、まずは身近な問題を解決できるプロダクトをとはじめた食のサービスで、食・農業・環境の問題は密接に関係していることに気がつきました。食とそれを支える農業が環境に与える影響はとてつもなく大きく、課題も山積みです。テクノロジーを使って農業の課題を一つひとつ解決することが、自身のテーマである環境問題の解決につながると信じています」
本郷真理
- ●略歴
大学院にて環境DNA分析の研究を行うだけでなく農業にも取り組んでいた。学生時代の4年間、滋賀県において約50種類の野菜を自然栽培でつくり、販売して学費の一部をまかなった強者。その後、大学院では海や河川、湖沼などにいる魚から放出されている粘液や糞に含まれているDNAを分析することで生物多様性を知ることができる最新技術(環境DNA分析)の開発を行う。
●農業とのかかわり
「農業を始めるキッカケは、琵琶湖の水質汚染を考え始めた中学生時代に遡ります。当時から釣りが趣味で、琵琶湖へよく行きましたが、琵琶湖の南部は水質が悪く、北部は泳ぎたいと思うほど綺麗で、同じ湖でも水質にずいぶん差があることに気がつきました。その後高校生になり独学で調べたところ、琵琶湖の南部の水質は、農業排水による影響があると分かりました。米の生産が盛んな滋賀県では、肥料や農薬の成分が、河川へ流れ、琵琶湖に行き着いていました。それを知ったことで、自ら肥料や農薬を使わない自然栽培を実践しようと思い、大学生になって農業を始めました」
IT×環境DNAで広がる土の微生物の可能性
- 「土の情報を見える化」するという発想の発端となったのが、「環境DNA分析」という最新技術です。
これは、海や河川、湖沼などに生息している魚から放出された粘液や糞に含まれるDNAを分析することで生物多様性を知ることができる、というもので土の微生物解析にも応用することが可能です。
私たちは、土質の診断で得た大量の微生物のデータに栽培データ、気象データなどを組み合わせることで「土の情報を見える化」できると考えています。
すでに商業的に土壌微生物を診断する会社が何社も存在しますが、このプロジェクトがユニークなのは、大量のデータを機械学習で処理する点です。
土壌微生物の解析データとそれ以外の情報から規則性やルールを見つけ出すことで新たな発見が期待できます。
その結果として、「経験や勘」のみに頼らず、エビデンスに基づいた、より科学的な視点で農業をサポートすることができるようになるはずです。
この活動のゴールは「より安全な方法で、生産量を上げること」
- 農業では代々受け継がれてきた方法や、その土地の気候風土にあわせた経験を持つことは非常に重要な要素です。
しかし、経験やその土地に関するデータを持たない農家さんは、播種から収穫までの間、自分の方法があっているのかわかりません。
せっかく植えたものが、天候不良やその土地に合わなかったという理由で、まったく収穫できないということもあるのです。
これってとてもリスキーです。
そこで私たちは、「経験」を科学的に再現することを思いつきました。
各地の圃場の土壌微生物リストや、微生物の組成マッチ度が近い農家さんの作業内容などを共有することで、客観的な視点で保有する圃場の状態や不足要素、今後の作業が想像できるようにします。
この活動のゴールは、様々なリスクを減らし、生産量を上げることです。
全国から集めた大量の土壌微生物のデータと栽培実績や履歴、気象情報などから因果関係を推定し、土作りや作物の生育などを含む分析結果を現場で使える形に落とし込むこと。
そうすることで、確実によりよい土壌がつくれるようになり、最低限の資材投入で病害虫のリスクが減り、生産効率が上がると考えています。
そのために、より多くのデータを必要としています。
今回は全国から土壌のサンプルを集めてデータベースを作成するための資金の一部として、300,000円をクラウドファンディング を通じて募りたいと思っております。
資金の使い道
- 基本的なデータを取るために、500サンプル程を必要としています。
サンプルが増えるほど精度が向上し、生産効率を高めることに繋がると考えております。
これに必要な分析費用(採取キットや試薬を含む)、キット送付の送料などの経費に使用いたします。
【調査方法】
採取から分析までの流れ
① 採取キットを使って畑から土を採取
② 研究所に送る
③ アプリで作業内容を記録(土壌微生物検査2回以上のコースの方)
④ 研究所で土壌微生物の組成を分析
⑤ 分析結果を送付
⑥ 最終的に集まった全データを元に学習し、レポートを作成
こんな方々からのご支援をお待ちしています!
- 1 【研究者・開発者向け】土壌微生物と作付け等に関わる研究を行なう団体および個人
2 【農家さん向け】微生物調査に興味がある農家および農業法人、個人
3 【一般向け】土壌微生物への知見をお持ちの団体および個人
この活動は今後、農家、研究者だけでなく、エンジニアからデザイナーまで、様々な専門家と協力し、プロジェクトとして進めていきたいと考えています。
私たちは土壌微生物分析という視点から農業を発展させるために一緒に活動する仲間を募集しています。
こんな農家さんが応援してくださっています!
OmeFarm / 太田さん @東京都青梅市 [野菜/生はちみつ] ※以下五十音順
- 土壌微生物は、作物の生育に影響があると思います。
例えば、地表にどのような虫が発生したかでその被害の内容も変わりますし、作物によって天敵が違うように、土中にも同じ事が言えると思います。
バクテリアの世界は地上のそれとは比較にならないくらいだと個人的には思っています。
とは言え、今まで放射能検査、残留農薬、窒素などの検査に土壌サンプルを出した事があるものの、微生物そのものについては、調べる機会自体ありませんでした。
現状、収穫量や生育にムラがある、ということはあまりありませんが、試してみてエラーという事はあります。
より正確にクオリティが高い生産物の収量を上げていく事が非常に大事だと考えていますので、全ての圃場の、土壌の状態が気になります。
やはり同じ青梅市内に圃場があるといえど、全く土質の異なる地域で農業に取り組んでいるため、出来不出来がはっきりしているものもあります。
その原因が土壌微生物によるものが大きいとしたら面白いですし、論理的にわかったら対策の仕方も変わるのかもしれないなと考えています。
微生物にどんなものがいて、それらがどんな作用をもたらす、などがわかる事自体がとても意義があるんじゃないか、シンプルに面白いと思います。
グリーンバスケットジャパン / 加藤かいさん @神奈川県小田原市 [オリーブ/野菜]
- 生育、病害虫など全てのことに対して、土や土の中の微生物が影響するとは思いますが、それがどの程度影響するのかを知りたいです。
SOFIXで調べてみたいと考えたこともありますがコストや手間などで診断には至りませんでした。
今回の診断では、「日頃の作業で微生物が増減しているのか?」を知りたいと思っています。
例えば米ぬかを撒いたら乳酸菌は増える?落ち葉を撒いたら放線菌は増える?耕耘したら微生物は減る?といった巷でよく言われていることが本当なのか科学的な根拠が欲しいからです。
また、自身の栽培方法が科学的な観点で正解であるかどうかの判断ができることに期待しています。
どろんこやさい / 大坂宇津実さん @兵庫県篠山市
- 微生物はどこにでもいる、土にも豊富な微生物がいると思っています。
野菜が成長することに要因するのも、乳酸菌、納豆菌、放線菌、といった微生物です。
これを土として圃場に入れて増やし、畑に撒くことで、有用微生物群を増やすことに取り組んでいます。
また、微生物の活動は虫にも影響すると思っています。例えば、微生物は虫の体を分解することもあるため、有機でやるには微生物の働きは必要不可欠です。
参考書に書いてあることが本当なのかどうか、検査をして確かめたいと思っていますが、どこに委託したらいいのか、費用がかかるのではないか、といったことでまだチャレンジしたことがありません。
このプロジェクトで、微生物や栄養がどんな状態ならば、どんな栽培ができるかといったことを完全とは行かないまでもコントロールできるようになることを期待しています。
農人たち/宮本暢常さん @栃木県宇都宮市 [野菜]
- 土壌微生物は人間の腸内菌のようなイメージだと捉えています。
そういったイメージがあるので、未知の土壌微生物環境に影響が出ないよう「農薬などを使用しない」という観点で土作りに取り組んでいます。
有機質肥料と土壌微生物と作物の病気予防に相関関係があるのか、ということに非常に興味があり、実は過去にも土壌微生物の調査を試みたことがあります。
しかし、土壌微生物の一時的な行動までは把握できたとしても体系的に把握するまでには至りませんでした。
そのため、長期的な視点で有益な土壌微生物をより活性化させる適切な施肥設計ができてないことに歯がゆさを感じています。
今後、診断結果をもとにして、土壌微生物について科学的に考察し、新規肥料の開発を実現したいです。
最後に 「土を科学する・見える化する」し、今後の農業を支えたいので、ご協力のほどよろしくお願い致します!